最終更新日:2025/10/21

これから「スタジオ撮影」や「カメラマン募集」を始めようとしている方向けに、なにかヒントになればと、ざっくばらんに作った「まとめ」シリーズです。
今回は前回に続き「写真掲載トラブルを回避しよう」という話です。


トラブル事例


失敗談
『カメラマンから、これまでに渡したすべての写真の掲載許可を取り消す、すべて削除しろと一方的に言われてしまった…』
を回避するにはどうするか?

親しくなった特定のカメラマンとよく1対1で撮影に行く人は、気を付けたほうが良いかもしれない問題。

とくにカメラマン側が勘違いガチ恋系だった場合、別のカメラマンと撮影にいっただけで因縁・言いがかりをつけられることも…。たとえこちらがそんなこと微塵も思っていなくても「相手側」はどう思っているかわからない。

撮影時点では友好関係にあっても、ふとしたきっかけでトラブルに発展、けんか別れになってしまうこともあるかもしれない。

そんな時、これまで撮ってもらった写真はどうなるのだろうか?

「こんなやつに撮ってもらった写真なんていらない」とキレイさっぱり捨てられるなら良いかもしれないが、お金や手間暇をかけて一生懸命つくった衣装・アイテムだったり、いまはもう壊れてしまった・手放してしまった衣装・アイテムだった場合は、、、。

どうしたら「写真データだけは使えるようにすることができるのか」対策を考えてみた。

※まず先に言っておきますが、法律関係の専門家ではないので、あしからずです。。。


利用規約が書かれていたらしっかり確認を!


撮影を行うにあたり、利用規約や条件・ルールをツイフィールやX/Twitterの固定やWEBページなどであらかじめ載せているケースがある。

人によってはかなり癖の強いトンデモ内容が書かれていたりと、よくよく読んでおかないと後から写真が使えなくなってしまうようなことが書かれていることも。

  • 被写体によるトリミングや加工NGと書かれている。
  • 被写体によるSNS等への掲載にも個別の許可が必要。
  • SNS等への掲載・公開に期限が設けられている。
  • 送った写真は必ず掲載しないといけないルールがあった。
  • カメラマンもSNSに自由にデータを掲載できる記述があった。
  • カメラマンのクレジット表記が絶対に決まった形で載せないとけないルールがあった。

X/TwitterのDMやLINEの文面で行われることが多い撮影の約束。「撮影」が行われたのであれば何らかの規約・契約の上、実施されたとみなされそうなので、わかりやすいところに規約が書かれていた場合は、そもそも見ていなかった・知らなかったという主張は、仮に見ていなかったとしても通らない可能性が高い。

また、予定確定までの間に合意したと捉えられるような会話が文面として残っている場合も、「同意した」ことになってしまう可能性がある。

ただ、ものすごいわかりにくいところにひっそり存在している場合は、無効となる場合もあるようだ。

とにかく、相手がルールを提示しているなら、しっかり読むよう心掛けたほうが良いだろう。


トラブル後に規約が書き換えられた?


ちょっと待って!その規約、本当に最初から書いてあったの?という問題。

ありがちなケースとして、トラブル発生後にしれっと中身を書き換えて、「最初から書いてありました」と言い張られてしまうケース

不遡及(ふそきゅう)の原則のもとで考えるなら後出しのものは「過去に遡って適用しない」ことになるので、撮影の約束が成立した【②】以降に変更された情報は、適用されないのが一般的なはずだが、相手が調べる術を知らなかったり、印刷やキャプチャで残していない限りは「言ったもの勝ち」になってしまうことも。

※そもそも利用規約の作成には「ユーザーの権利を制限する」不利益条項は規約にいれること自体が禁止されているそうなので、あまりにも一方的て理不尽な内容であれば、無効を主張することもできるかもしれない。

かんたんに調べられる方法も知っておくと便利。

相手がWeb上に載せているのであれば、WebArchive(ウェブアーカイブ)というサービスで過去の情報を調べることができる。

①Web Archive(https://web.archive.org/)にアクセス。
②相手が規約を載せているWEB(ツイフィなど)URLを入力して、検索。
③下記のような画面が表示されたらスナップショットが記録されているので、過去にさかのぼってページ内に記載されていた内容を確認することができる。

ただ、このサービスも決して万能ではなく、、、そんな頻繁に更新されるものではない。運が良ければわかる程度だ。サイトによってはそもそも記録がとられていなかったり、どえらい昔のものだったりというケースも、、、。


「削除要求」を拒否できる予防策は?


著作権は撮影したカメラマンに自動的についてしまうので、この権利をもつカメマンからの「削除要求」を断るのはなかなか難しい。

被写体側が削除しなくて済むようにするためには、被写体側が受け取った写真を「恒久的に自由に利用できる」という権利を、撮影する前にカメラマン(著作権者)との間で事前にしっかり合意をとっておく必要がある。

特に重要なのは、「一度公開した写真の削除を、後からカメラマンの都合で要求しない」という旨の合意となる。

たとえばこんな感じだろうか。

  • 被写体はカメラマンから受け取った写真を、期限の定めなくSNS上で掲載することができる。
  • カメラマンは、被写体に許諾したSNS上での利用について、許諾取消・削除要求することはできない。

ただし、逆に被写体側が悪意を持ってカメラマンを侮辱するような内容で写真を掲載した場合はこの限りではなくなってしまうので注意が必要だ。

あくまでも、ふつうに使い続けることができるという点で考えてほしい。


被写体側の肖像権とプライバシー権を守る


カメラマンとの関係が悪化し、「削除要請」を受けて削除せざるを得なくなった場合。

こちらが削除したとしても「相手側」が自分の写っている写真や動画をどう取り扱うかは不安が残る。
どんな拗れ方をするかにもよるが、無断で第三者に譲渡・販売されたり、リベンジポルノまがいなことをされる可能性も否定できない。

事前に「データは、本人(写っているあなた)の許可なくインターネット上に公開しないこと、また第三者へ譲渡・販売しないこと」についても合意をとっておいたほうが良いだろう。

仮ににプライベートな写真をばんばん流されてしまったらすぐに公開された画像や動画のURL、投稿日時、スクリーンショットなどを保存し、証拠として残しておき、然るべき機関へ相談、削除要請、被害届の提出など粛々と対応するようにしよう。


結局、どうするのが正解なのか?


もちろんトラブルを起こさないようにするのが一番でだが、自分も相手も人間。
なにがきっかけで拗れるかわからない。

「仲がいいから大丈夫だろう」と、「権利」や「利用ルール」を曖昧にするのは危険。

後々のトラブルを回避するためには金銭やり取りの有無にかかわらず、「著作権の取扱い」「被写体(あなた)の肖像権」について箇条書きにした合意事項を送り、相手から「承知しました」「同意します」という明確な返信をもらって「電子的記録」として保存しておく必要がある。

口約束だけでは言った言ってないの無限ループとなってしまうので注意が必要だ。

合意書のサンプルを用意してみた。
カメラマン側からすると、ちょっとカメラマン側に不利な感じが否めなくもないが、権利的に強いカメラマン側に対抗するには事前にこれくらいの準備が必要なようだ。

写真利用に関する合意事項リスト(サンプル)
(被写体:[あなたの氏名]、カメラマン:[相手の氏名])

以下の事項について、カメラマンはすべて同意するものとします。

1.写真の利用許諾
被写体は、カメラマンから納品・提供された対象写真(過去に撮影し納品・提供された写真および、合意以降あらたに撮影、納品・提供される写真)について、期限の定めなく個人的な利用(SNS投稿を含む)の範囲で利用できるものとします。

2.SNS等での公開許諾
被写体は、カメラマンから納品・提供された写真を被写体の個人SNSアカウント(X/Twitter, Instagram, コスプレイヤーズアーカイブ, Facebook, TikTok等、今後登場する全ての個人向けSNSプラットフォームを含む)に期限の定めなく公開できるものとします。

3.加工・改変の許諾
被写体は、SNS投稿等での利用に際し、写真のトリミング、色調補正、フィルター加工、スタンプの追加などの加工・改変を自由に行えるものとします。

4.削除要求の権利放棄(恒久的な不削除)
カメラマンは、いかなる理由であれ、上記2.に基づき被写体が公開した写真について、その削除や非公開化を要求しないものとします。

5.データ管理の権利とカメラマン側の利用制限
カメラマンは、被写体の許可なく第三者への写真データの譲渡、販売、商業利用を行わないものとします。また、カメラマン自身が自己のSNSやポートフォリオ等へ写真を公開する場合は、事前に被写体の許可を得るものとします。

6.クレジット表記の有無
SNS等での公開に際し、カメラマン名のクレジット表記(タグ付け等)は任意とします。

あれこれ書いてしまったが、
いきなりこんなものが送られてきたら面食らうかもしれない。

親しい関係であっても相手が身構えたり、感情的に拒否したりする可能性も否定できない。
「自分を信用していないのか」と。。。

いきなり送り付けるのではなく、相手への配慮を示しつつ、どうしてこれが櫃世なのかを説明するプロセスをへて送ったほうが良いだろう。

こういうとき、AIに聞くと、けっこうそれっぽい文面を作ってくれるのでおすすめだ(笑)

「[相手の名前]さん、いつも素晴らしい撮影をありがとうございます。[ジャンル]活動における[相手の名前]さんの写真やセンスを本当に信頼しており、今後もぜひ長く一緒に作品作りを続けていきたいと思っています。

実は最近、SNSで親しいクリエイター間での利用トラブルの話を多く耳にして、少し不安に感じています。万が一、今後何か状況が変わったとしても、撮っていただいた大切な写真は、ずっと安心して利用し続けたいと思っています。
これは[相手の名前]さんを疑っているわけではなく、お互いが安心して気持ちよく活動を続けるための『お守り』のようなものとして、写真の利用ルールを明確にしておきたいのです。
つきましては、今後のためのお約束事として、利用に関する簡単な確認リストを後ほど送らせていただいてもよろしいでしょうか。お手数をおかけしますが、ご理解いただけると大変助かります。」

あくまでもサンプルなので、自分が納得できるレベルまで調整し、送るといいだろう。

これは『お互いの権利を守りつつ、特に私が撮ってもらった写真を永続的に使う(SNSから消さなくていい)権利を確保したい』という点に絞ったシンプルな確認事項です。
これを[相手の名前]さんが同意してくだされば、私は完全に安心して今後も写真をアップし続けられます。
お手数ですが、ご確認いただき、もし問題なければ『合意します』と返信をいただけると助かります。」

「SNSのトラブル事例が増えているから、予防としてお互いに保険をかけよう」という方向で理由付けをして、合意をもらえるようにしてみよう。

ここまでの合意を得ておけば、仮に後日、なんらかのトラブルが発生したとしても、削除要請は「不当な要求」となるので跳ね返すことができる。

「消さずに使いづけたい」というシンプルな思いは、トラブルが起きていないうちはカメラマン側としても「もらってうれしい言葉」になるはずなので、NOといわれることはないだろう。

ここまで言っておいてなんだが、、、
これを送ったせいで関係が拗れたとしても、私は一切責任を負いません。悪しからず。🙇


みやさん@miya_1102(フォトグラファーみやざき)

カメラ歴10年以上。趣味から始めた撮影をきっかけに脱サラし、現在は商業フォトグラファーとして人物から商品、イベントまで幅広く活動中。 柔軟な対応力とスピードで、媒体掲載から販促活用まで「目的に応じた最適な写真」をご提供!撮影のご相談は、お気軽にお問い合わせください。